人は死ぬから生きられる2009/05/04 11:42

茂木健一郎氏の新刊を読んでみました.

茂木健一郎・南 直哉(2009)人は死ぬから生きられる-脳科学者と禅僧の問答-.新潮新書.189p.

http://www.shinchosha.co.jp/book/610307/

1.無記の智慧
2.脳の快楽,仏教の苦
3.人生は無常である

今回の本は,茂木氏と禅僧との対談.真剣な哲学談義は読み応えありでした.

皆,意識下にはマグマが溜まっている.

人間の魂にとって一番危険なことは,自らが拠って立つ体系が生や死の問題を扱う上で十分であると錯覚してしまうこと.

「無知の知」こそが魂の態度における唯一の要.

「諸行無常」.「行雲流水」

仏教というのは方法じゃなくて問いである.

「無記」,「不立文字」.

人間の修養のあり方としての実践の知.

考えるということの根底に触れることが,一つ重要なこと.人がものを考えるということの根底を一度バラすか,あるいはその意味をとことん問い詰めるという作業が,禅の修行中に方法論的に組み込まれている.

人が考えるということの根底に「考えられないことがある」ということに気づくことが重要.考えるということの限界,考えるということの根本的な意味まで分け入らなければいけない.考えるということを見つめ直して,自己というものを再構成していく.

禅は知の体系を壊して,思考の前提になっている部分を疑い解体していく作業.「自分とは何か」という存在の問題は,個人を超えたものである.同じ問題を抱えた人に共感するようになる.一生懸命自分のことをやっていれば,それが人につながっていく道がある.

近代科学の最大の痛恨事は,人間がよりよく生きるとか,人間がいかに幸せになるかという問題について全く何も答えないこと.

「無記」,生まれてくるのに根拠はない.根本的な問題にはあえて語らない.