私塾のすすめ2008/06/08 21:34

斎藤 孝・梅田望夫(2008)私塾のすすめ-ここから創造が生まれる-.ちくま新書.206p.

最近お2人の本をせっせと読んでいます.これは,斎藤さんと梅田さんの初の対談集です.2人の共通する思いは「私塾願望」.

志を同じくする仲間と熱く語り合い,学ぶ.中心には信頼できる人格と力量のある師がいる.明治という時代の骨格をつくった「自助」の精神を再建する必要がある.スマイルズの「セルフ・ヘルプ」(自助論)の中にこの時代の人の「ロールモデル」がある.この強さ.自助の精神.学び続けることの大切さ.独立自尊の意義深さ.福沢諭吉「知者は水を楽しみ,仁者は山を楽しむ」.伝記が心の骨格を作る.天才や偉人は学ぶことがうまい.トラブルの乗り越え方というメンタル面でも勉強になる.縁を的確に感じる力を磨く.「けものみち」を歩いている感じ.「直感」を信じる.「指向性の共同体」.リーダーが没頭しているものでないとうまくいかない.教育は,「あこがれにあこがれる」という構造.インターネットがわれわれの能力の増幅器.

「私塾」は,志のある若者が集い,切磋琢磨する場.その学びの熱さが,私塾を離れても持続する.学ぼうとして人に教えを仰ぐ心の開放的な構えが私塾で養成された.良い「空気」をつくるのがリーダの役割.「ポジティブ」な空気をつくることの出来る人.

音読や四股踏みにこだわる.誰にでもできる「型」.祝祭的な時間が貴重.「あこがれ」と「習熟」が二本柱.あこがれの喚起.リーダーに熱がないと,不思議と化学反応は起きない.

もっとほめろよ,おまえたち.「直感を信じろ,自分を信じろ,好きを貫け,人を褒めろ,人のあら探ししている暇があったら自分で何かやれ.」

「オリジナリティ」と「定着」.過去にあったいいものをうまく組み合わせて,現在の型に落とし込むということがライフワーク.重要なことは,けっして使い尽くすことのない資本をつくることだ(ゲーテとの対話)

「自分は実はこういうことがやりたいんだ」ということを言う. 「自己評価」と「他者からの評価」のすり合わせが得意でない人が多い.「ノー」と言われることに対して弱すぎる.受け止めてもらえるのは,五十人あたって一人だ.数あたる.量をこなす.ある一定量をこなさないと,質的変化がおこらない.大事なのは「負けるということをおそれない」こと.結局何回トライしたか.

自分の中に「私淑する人」をたくさん作る.自分とぴったりあったことでない限り,絶対に競争力が出ない時代になってきている.「自分の志向とその仕事が合っている」ということに自覚的であることが,これからますます求められる.「好きなことを貫く」.自分の志向性にあった場所を探して移っていかないといけない.人との出会いを本当に大切にする.他者と普通は合わないものだ.

「心の自己浄化装置」が必要.「職人気質」の現代バージョンを自分の心の技として持つ.「なんとか職人」という自己規定をすると腹が決まる.

生きるために水を飲むような読書.エネルギーを沸き立たせるための読書の時間.人間は,案外小さなことで幸せになれる.

まず,ビジョンがないと何も始まらない.ビジョン,アイデア,スタイル.暗黙知を共有しているときに幸福感を味わえる.

人生観をつきつめて考える時期.「生きるとは何か」という問いを問い詰めた時間.自分がどういうふうに生きたらいいかということは,誰よりも考えた.

何かを始めようとすれば,何かを諦めなくてはいけない.仕事を整理する.本当に対象のことが好きなのかどうか,とにかく相当勉強してみないとわからない.ギリギリまでやった経験によって,自分にはそんなにたくさんのことはできないんだという理解ができた.自分の「時間の使い方」に対して自覚的でなければならない.流されたら本当に何もできない.何を遮断するか決めて行かないと,何も成し遂げられない.「義理」とかそういうものを捨てる.自分が熟成する時間を大事にする.

とても参考になりました.自分が何を成し遂げるたいのか,そのために何を諦めるのかじっくり考えています.